triage
近年、見聞きすることのあるカタカナ用語「トリアージ」
医療用語、のようですが・・・正しい意味をご存知ですか?

今回はこの「トリアージ」をピックアップして解説します。

早速、謎の?ピグモン解説員赤いシャルルと一緒に意味を解説してゆきましょう~

シャルル
失礼な紹介だな……私を誰だと思っている!

Pino
だから!アナタ、だれ!?

トリアージとは?

トリアージ (tirage:英/triage:仏)
〔選別・分類の意〕
災害や事故などで同時発生した大量の負傷者を治療する際、負傷者に治療の優先順位を設定する作業。
限られた医療資源で最大限の救命効果をもたらそうとするもの。

英語のtriageトリアージの語源は「選別」を意味するフランス語のtriageトリアージュが由来の言葉で

トリアージ、選別、死傷者分類

の意味で使われます。

フランス語tirageトリアージの由来は「羊毛の選別」?

フランス語で「選別」を意味する「trier」に語源を発し、良い物だけを選り抜く、選別するという意味で、フランス繊維商人が羊毛をその品質からいくつかのクラスに区分けするのに用いた言葉と言われています。

医学の世界に応用されたのはナポレオン時代で、傷ついた多くの戦傷者の中から比較的軽傷者を手当てして戦線に復帰させ、重症者は後回しにするという戦略的な言葉として用いられたが、今日のようなトリアージの概念が確立されたのは第一次世界大戦後です。

>引用参考:公益社団法人松坂地区医師会サイトより

シャルル
トリアージは主に戦場の野戦病院で用いられた選別方法のことだな。軽傷者を優先的に手当をして戦線へ復帰させ、手のかかる重傷者の治療は後回しにする戦略の一部だ。

Pino
その頃のトリアージは効率だけを考えた非情な「選別」だったんだね;

日本におけるトリアージとは?

日本でも「トリアージ」も「選別」という意味で使われています。

  1. 大規模災害や大事故の際、救命・搬送の順序を決めるための選別
  2. 救命救急部門における救命の順序を決めるための選別

のことを指します。

2.に関しては、日常的な「救急外来や初診受付など、電話相談で緊急性を判断して受診の指示すること」もトリアージと呼ばれるようになりました。

Pino
子供の夜間・休日の急な発熱や体調不良に専門窓口に電話して、緊急性を判断・指示してくれるのもトリアージということだね!

シャルル
すぐに救急車を呼ぶのか、自宅で様子を見るのか・・・医療従事者が電話でトリアージすることにより、現場の負担が緩和される注目のシステムだな。

救命搬送トリアージ

大規模災害や大事故発生時に多数の傷病者が同時に発生した際に、緊急度や重症度に応じて適切な処置や搬送を行うための治療優先順位を決定する選別方法

救急の原則と言わている3つのT(3T)のうちのひとつ。

救急の原則の3Tとは?

  • 選別(Triage:トリアージ)
  • 治療(Treatment:トリートメント)
  • 搬送(Transport:トランスポート)

トリアージは誰が行うのか?

災害時における救急救命の最大効率を得るため、一般的に直接治療に関与しない専任の医療従事者が行うとされています。

これは常時トリアージ専門の医療医療従事者が居る、という意味ではなく、緊急時に対応する医療従事者(通常は救急救命士、看護師、医師)の中からトリアージだけを行い、その際はトリアージを効率的に行うために、その専任者は治療にかかわらないという意味です。

日本における救命搬送トリアージの歴史

日本では1888年(明治21年)に軍医であった森鴎外がヨーロッパからトリアージのシステムを持ち帰ったと伝えられています。
しかしながら当時の陸軍では、トリアージが赤十字国際条約で禁止されている「差別的治療」に当たるとし導入は見送られました。

その後「分類はするが優先順位はつけない」という欧米の型を変形させた日本独自のトリアージ方式を運用し、第二次世界大戦後にその方式は解体されました。

現在のトリアージ方式が定められたのは?

1994年(平成6年)の中華航空機墜落事故の際、消防・医師会などで様式が異なり現場が混乱したこと、また1995年(平成7年)に起きた阪神・淡路大震災においても充分なトリアージが行われなかったことを教訓に、1996年(平成8年)に現在のSTART法に沿って選別を行う標準様式が定められました。

START法

START(Simple triage and rapid treatment)の略
(簡単な選別と迅速な治療)

傷病者の状態を、いわゆる「YES,NO」で判定してゆく診断チャートです。

この診断により傷病者を重症群Ⅰ「赤」、中等症群Ⅱ「黄」、軽症群Ⅲ「緑」、救命困難群0「黒」の4段階に分類し、トリアージタグ(後述)により識別しやすくします。

  • 歩行が可能か?
  • ↓ 歩ける →【緑】(状態の悪化がないか絶えず観察)
    ↓ 歩けない(下の設問へ)
    ※口頭の答えを鵜呑みにせず介添えはせずに本人に起立させ歩行出来るかどうか確認することが重要。

  • 呼吸をしているか?
  • ↓ 気道確保をしても、呼吸がない → 【黒】
    ↓ 気道確保がなければ呼吸できない →【赤】
    ↓ 気道確保がなくとも呼吸できる(下の設問へ)

  • 呼吸回数は?
  • ↓ 速い呼吸(30回/分以上)もしくは弱い呼吸(10回/分未満)→ 【赤】
    ↓ 通常呼吸10〜29回/分(下の設問へ)
     ※なお、災害医療においては、所要時間短縮のため、6秒間で呼吸数を計る。

  • 循環状態(脈拍)はどうか?
  • ↓ 手首の脈拍が120回/分以上、もしくは脈拍を触知できない →【赤】
    ↓ 手首の脈拍を触知できる(下の設問へ)
    ※ショック状態が疑われる場合(脈が弱く速い、皮膚が冷たく湿っているなど)は赤を選択する。

  • 意識レベルはどうか?
  • 簡単な指示に応えられるかどうかで判定する。
    例:手を握ってください
    (ただ手を握らせるのではなく、きちんと離すことが出来るか確かめる)

    ↓ 応えない → 【赤】
    ↓ 応える → 【黄】

トリアージによる色別4段階の概要

黒(black tag)

カテゴリー0

(無呼吸群)

死亡、または生命徴候がなく、直ちに処置を行っても明らかに救命が不可能なもの。
赤(red tag)

カテゴリーI

(最優先治療群)

生命に関わる重篤な状態で一刻も早い処置をすべきもの。
黄(yellow tag)

カテゴリーII

(待機的治療群)

赤ほどではないが、早期に処置をすべきもの。基本的にバイタルサインが安定しているもの。
一般に、今すぐ生命に関わる重篤な状態ではないが処置が必要であり、場合によって赤に変化する可能性があるもの。
緑(green tag)

カテゴリーIII

(保留群)

歩行可能で、今すぐの処置や搬送の必要ないもの。
完全に治療が不要なものも含む。

搬送・救命処置の優先順位はI → II → IIIとなり、0は最後に救護所へ搬出される。

トリアージタグ(タッグ)とは?

救命搬送トリアージの際に、傷病者の重症度や緊急度(前項の表を参照)をわかりやすく表示する手札サイズのカードのこと。

START法で傷病者を重症群Ⅰ=中等症群Ⅱ=軽症群Ⅲ=救命困難群0=黒、など4段階に分類し、該当するカ所のタグを残してちぎって傷病者の身体につけられます。

部位の優先度は「右手首⇒左手首⇒右足首⇒左足首⇒首

このトリアージタグは3枚つづりとなっており、医療救護活動場面(トリアージ、応急措置、搬送及び治療)で一貫して利用できます。

3枚つづりのうち

  • 1枚目⇒災害現場用
  • 2枚目⇒搬送機関用
  • 3枚目⇒収容医療機関用

「収容医療機関用」の裏面には、医療情報や特記事項等が記載でき、カルテの代用になります。

トリアージタグの意義

  • 救命治療の際に、どの傷病者の治療優先度が高いのかを一瞬で識別できる。

START法で傷病者を重症群Ⅰ=赤、中等症群Ⅱ=黄、軽症群Ⅲ=緑、救命困難群0=黒など4段階に分類し、該当する色タグを残してちぎり、傷病者の身体につけられます。

  • 再トリアージの際も前のタグを残して、新しいタグを付けるため傷病の経過が確認できる。

トリアージ結果は時間と共に変化するため再度の評価が必要です。
再トリアージをした際、前のタグは外さずにそのまま付けておき、新しい色のタグを追加で付けるように定められています。

  • 緊急時の判定・診療記録として活用できる。

傷病者の識別事項(名前、性別、連絡先など)の記録が可能。
傷病者は災害現場、医療機関入口、救急室、手術室など移動しながら、別の救助者によりトリアージ、搬送や診療を受けます。
その際、先に判定したタグに書かれた情報を参照することにより効率的な診療ができます。(カルテの代用としても利用)

>引用参考:看護roo! 用語辞典より

病院内(院内)トリアージ

二次トリアージ(院内トリアージ)とは病院の救命救急部門において、トリアージナース(ERナース)、訓練を受けた救急救命士、医療従事者等によって行われます。

例えば、病院運営システムにおいては、ER受付に到着した患者を病院トリアージナースが診察し、ナースは患者の訴えの変化を評価し、ERにおける治療順位を決定します。

トリアージの方法は前項、救命搬送トリアージと同じSTART法に準じます。

避難所トリアージ

大規模災害時、大量の避難者が出て避難所が大幅に不足する場合に、避難所利用者に優先順位を付け、自宅を失った人、高齢者、障害者などを優先して受け入れる「避難所トリアージ」といった概念もあります。
 
この記事の各「トリアージ」に関する記述は下記のサイトを参考にしています。
>引用参考:Wikipedia[トリアージ]より

トリアージ「選別」の概念

今まで「救命の優先順位を判定・選別する」というトリアージを解説してきましたが、けして災害医療=トリアージを意味するものではありません。

これは、本来の医療の「全ての患者を平等に救う」という原則から見れば「救命搬送トリアージ」は例外中の例外と言えます。

よって大規模災害や大事故、テロなどによる想定外の大量負傷者が同時に発生し「すべての傷病者を治療することができない」極限の状態にのみ、行われる行為です。

現在、世界的に流行中のCOVID-19(新型コロナウイルス)の治療においても、最終治療法の人工呼吸器やクオモの使用をめぐっての「トリアージ」が行われているとの報道もありました。

このような極限の「トリアージ」を回避できるよう、またそれらを想定した医療現場対策が、世界的にも今後の重要な課題となっています。

まとめ

トリアージの意味は?

  1. 大規模災害や大事故の際、救命・搬送の順序を決めるための選別
  2. 救命救急部門における救命の順序を決めるための選別

今回は救命搬送時に使用されることの多いワード「トリアージ」について解説しました。

大規模災害や大事故における救命搬送・治療の際の「選別」を意味しますが、最近では救命救急部門の受付や、救急通報電話サービスでもトリアージは行われています。

いずれにしても「選別」「優先順位を決める」と覚えておきましょう。

今回の記事も、皆様のお役に立てましたら…嬉しいです♪